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  • iPS細胞の再生医療で男性型脱毛症治療

    男性型脱毛症の治療には、薬を服用するものや頭皮に直接成長因子を投与するなどという方法がありますが、最初からカクテルとして出来上がっている成長因子を投与するのでは、副作用があったり拒絶反応などが出てしまうこともありました。
    しかしiPS細胞でも広く知られるようになった再生医療の技術を使用すれば、自分自身の幹 細胞から成長因子をとりだし、それを毛根にある毛乳頭に注入していくことではたらきを失ってしまっていた毛包再生をはかり、ふたたび自分自身の髪の毛を発毛させることができます。

     

    この再生医療技術を利用した夢のような男性型脱毛症の治療方法は、日本のいろいろな大学や資生堂が研究を進めていることでもしられていて、市場規模にすると20兆円にもなるというので、大きな期待がよせられている分野でもあります。
    具体的に、どのようにした方法で毛包再生を実現するのかというと、まずは患者さんの頭皮から、直径にして5ミリ程度の皮膚を切り取り、そこから髪の毛を成長させるはたらきのある幹細胞を取り出して、数か月の期間をかけて培養させていき、その後で患者さんの男性型脱毛症の症状があらわれているところに培養した幹細胞からとられた成長因子をふたたび注入していくという方法です。それによって、男性型脱毛症ではたらきがにぶくなっていた毛母細胞がふたたび力をとりもどし、あたらしい髪の毛をどんどん再生していく能力を得るようになります。髪の毛が生えてこなかった部分はもちろんですし、細くて頼りない髪の毛しか生えてこなかった部分も、毛母細胞が活性化させられることによって、これまでよりも力強くしっかりとした健康的な髪の毛が生えてくるようになり、髪の毛全体が若返ることになります。
    脱毛症に対処するためには、自分自身の髪の毛を植毛して髪の毛を増やしたり、カツラを利用するといった手もありますが、それでは脱毛症の根本的な治療とはならないため、やはり自分自身で髪の毛を生やす力を獲得したいと考えている患者さんも多いはずです。
    資生堂では、カナダにあるバイオベンチャー企業、レプリセル社の再生医療技術を利用するために2013年に提携をすませていて、さらに神戸市にはこの研究のための拠点をあらたにもうけて本格的なiPS細胞を使った再生医療で髪の毛を生やしていくという根本的な脱毛症治療の研究を進めています。
    幹細胞は、いろいろな臓器に分化するという能力をもっているため、将来的には、臓器なども自らのiPS細胞で作ることができるようになるといわれていますが、毛母細胞の再生については、さまざまな研究機関でわたしたちが驚くようなスピードで研究が進んでいるのです。
    すでに、2014年には臨床試験でもヒトに向けた毛母再生を行っていますし、2018年をめどにしたこの技術を応用した毛包再生医療を事業として始める予定となっているので、いよいよわたしたちにとっても脱毛症のもっとも効果的な治療方法として体験できるようになります。
    さらに、iPS細胞による毛包再生が進んでいけば、今ある育毛剤や発毛剤といった商品への応用もでき、これまでよりも治療環境はどんどん改善していくでしょう。

     

    男性型脱毛症は、遺伝も要因にありますし、生活習慣によって食事や睡眠、ストレスなどが影響してくるともいわれていますが、この資生堂の技術が医療機関にも提供され、患者さんの治療に利用できるように実用化されれば、そういった要因にかかわらず、脱毛してしまった髪の毛を取り戻すことができるようになると期待されています。
    そして自分で健康的な髪の毛を生やせる自家細胞移植技術による治療は、男性のみならず、女性のひとの脱毛症にとっても大きな希望といえます。