薄毛症状に悩まされている男性は世の中に意外と数多く存在するものですが、その原因として今最も注目を集めているのがAGAという病気でしょう。人は薄毛と耳にすると頭皮の毛穴に皮脂やゴミが詰まって頭髪の成長が阻害されていると考えたり、老化によって栄養分が十分に頭髪まで供給できていないなどの血液循環の問題を想起しがちです。しかしこのAGAはこのいずれとも異なる症状で、主に遺伝などの影響から身体の中で特殊な働きが生まれてしまうことによって薄毛を引き起こしてしまいます。具体的には、テストステロンと言う男性ホルモンが男性の体内を循環する過程において頭皮付近にある5αリダクターゼという酵素がこれを反応してDHTという物質を作りだします。その後、AGAを発症する遺伝子を親方多数受け継いでいると、頭髪の根っこ部分にある毛乳頭にこのDHTを感知する機能が数多く搭載され、これが結びつくことによって毛乳頭は毛細血管から栄養分を受け取ることをストップさせ、その後は栄養不足に陥って細胞分裂を鈍化させていきます。こう言った一連の流れによって頭髪の成長サイクルは乱れて退行期や休止期を迎え、抜け落ちた頭髪が再び生え変わってくるタイミングも遅くなり、いつしか一向に生え替わらなくなってしまいます。
このような毛乳頭が残っている状態であれば、まだ薄毛治療専門クリニックなどで飲み薬や塗り薬による治療が可能です。しかし毛の生えない状態が続くと次第に毛包は縮小の一途をたどり、いつしか消滅してしまいます。この段階になるといくら手を尽くしても頭髪を取り戻すことはできません。ただし、こうなっても決して手遅れではなく、他にも植毛施術という手段が残されています。植毛とは髪が生えてくるのを促すのではなく、そこに人の手で植え込むことで毛量が増えたような状態を作り出すもの。具体的な手法としては自毛植毛と人工毛植毛とがあり、利用者はそのいずれかを選択することになります。人工毛植毛はナイロンなどで人工的に生成された頭髪を毛穴に植え込んだり、あるいは残っている頭髪に結びつけるなどの処置を行って頭髪の増毛を図ります。これは費用的にも安く、しかも最近の人工毛は人工的とはいえかなり性能が高いので他者の目から見ても判別がつかないほどです。ただし、人工的な頭髪ゆえに頭皮に定着することはなく、多くの場合、一定期間を超えると抜け落ちてしまうので、一年から二年おきに植え替えという作業が必要となります。
これに対して自毛植毛は自らの健康的に育っている自毛を毛包から丁寧に採取して、これを薄毛部分に植え込みます。多くの場合、AGAになると頭頂部や額の両サイドから薄毛が進行していくので、それ以外の部分の頭髪は健康的な状態で残存していることがほとんどです。そのため、この中から植毛するのに最適なものを選別し、適切に処置を行うことによって、うまくいけば自毛はその頭皮に根付き、一生ものの頭髪として定着して健康的な状態を維持して発毛、育毛を続けていくことが期待できるのです。ただし、自毛植毛は採取して植え込むといった複雑な作業が必要となることから費用がかなり高額になることがあります。さらにきちんと定着するかどうかは保障できないところもあるので、心構えが必要です。さらに自毛を採取する際や英コム際には皮膚を切除することもあるので、施術過程については事前にきちんと説明を受けておくことが大切です。ちなみに、日本皮膚科学会は男性型脱毛に関する診療ガイドラインを発表していますが、その中で自毛植毛は評価Bを獲得しており、その治療法に関して「勧められる」とされています。対する人工毛植毛に関しては評価Dで、医療機関においては「治療法として行わないように勧められる」とされています。これらの評価は絶対ではないものの、あくまで医学的な見地によるガイドラインとして頭に入れておく必要があるでしょう。